キックボードで出かける

車輪が一つのキックボードで出かける。

なんとなくこっちがいいと思った方向に走る。
スマホも見ない。行き先を決めないから、迷うことがない。

そういえば、友達はよく一輪車で移動していた。身長の高い人だったから、低い高架やトンネルはどうしていたんだろうと、今さらながら思い出した。特にそんな話はしていなかったから、きっと普段から道路を確認していたんだろうと思い直す。私の持っている友人の記憶は、一輪車で走る後ろ姿だった。

ふと気がついたら曇り空だった。霧も出てるから、先が良く見えない。
財布も持ってきていないし、雨の準備もしていないからここで終了して帰宅しようかと考える。
目の前のコインランドリーに入る。雨が降りそうだから準備しているバイク乗りが数人いた。ここにいる人は、みな似たようなことを考えているようだ。

マップアプリを起動させる。ここは三重県のようだった。
駅に行けば何とかなるだろうと路線バスで向かう。


終点の駅に近づくと高架下でイベントをやっているのが見える。連結バスがスイスイとプロジェクションマッピングの光を浴びながら、薄暗い高架下を走っている。
本来のお客さんである子どもたちの姿はまばらだが、キラキラして美しい。
キックボードに乗りながら、景色をずっと見ていたからだろうか。「人工物の光
ってこんなにワクワクするんだ!」と、興奮している。


きっと帰宅してからこの風景を思い出しても、色あせるんだろうと思いながら、連結バスを見ている。